私は博士課程生から大学教員になりましたので,一般的な就職活動を経験していません.だからこそなのか,現在の就活に対する違和感が大きいです.
まず,就活サイトへの異様な依存状況が挙げられます.いわゆる「リクナビ」や「マイナビ」ですが,ユーザである就活生は,それらを「ツールとして使う」のではなく「かかりきりになって動く」場合が目につきます.もはや宗教です.この時点で「社畜適正が高い=企業の求める社員像」とも言えそうで,それはある意味,内定を貰いやすいのかもしれません.しかし,傍から見ている私には,魅力ある人材からは程遠い「しょぼい&ちょろい人」に映ります.
その就活サイトですが,学生を不安がらせる・焦らせる演出等が目につきます.それに煽られた学生は,就活サイトをなめるように閲覧し,より多くの企業にエントリーします.企業側としては,多くの学生の目に留まる=企業の知名度が上がるなどPR効果があるということで,その面からそういったシステムは嬉しいのかもしれません.私見ですが,企業側は就活サイトに「お金を払って」自社の求人を掲載してもらい,「さらにお金を払って」検索の順位を上げてもらっている形だと思います.つまり,就活サイトはそれそのものが広告媒体であり,それによって収益を得ているということです.
しかし,その形は企業にとって本当に効果があるのでしょうか.私は,応募数が増えるほど選考コストが高まり,ひいてはずさんな選考形式になってしまうなど,本当に求めている人材を見つけにくくなると思います.「数は多い方が選べるから,いい人材を取りやすい」と考えがちですが,求める以上の人材はきっと内定辞退しますし,そもそも「不安だから増やそう」と応募してきた人達が多いわけです.そして,そんな「頭を使っていない人事」が「求める人材を見抜く目」を持っているとも思えません.程度が低く見えます.
そんな企業に就職して,学生は幸せになれるのでしょうか.もちろん,それなりにマッチしていれば問題ないのですが,大きくズレていたら不満も大きいでしょうし,人事の程度が低ければそうなりやすいと思います.企業側も学生側も,身だしなみや気遣いを超えた「騙し合い」になるのは仕方がないのかもしれませんが,就活サイトはそこにさらなる脚色・演出を加え,いらぬ誤解=不幸になる確率を増幅させている部分があると思います.
「何はともあれエントリー」な状態は,前だけでなく後にも学生側の心理状態に悪影響があると思います.エントリーが多いということは,倍率が上がることに加え,仮に倍率が変わらなくても,落選回数が増えることを意味します.落選するとダメージを受け,自信がなくなり,不安に駆られ,休息が不十分になり,体調を崩しやすくなり,結果,次も落選しやすくなるという負のループが生まれやすくなります.こんなキツいシステムを喜び勇んで使うなんて,私には考えられません.
他にも,ゼミ等でリクナビやマイナビのスタッフに来てもらって模擬面接することにも違和感があります.サンプル数の少ない聞きかじりですが,ダメな部分ばかりを列挙されるということです.ゼミ生の気を引き締めたいという親心なのかもしれませんが,私には,ゼミ生のやる気と個性を奪う儀式に映ります.逆に,褒められる部分が多くて丁度いいと思います.私としては,自分の印象の良い部分やアピールできる部分に気付いてもらい,もちろん本当にダメな部分は修正してもらいますが,自信をもって就活に臨んでもらいたいです.タブーが多いほど,面接時に「それらで頭がいっぱい」になり,アピールも何もなくなります.もし本番でうっかりタブーを犯したら,それを致命的と勘違いしてショックでリカバリーもできなくなります.そんな種をわざわざ蒔きたくありません.
もっとも,こういう考えは就活の本当の大変さを味わっていないからこそなのかもしれません.それでも,リクナビ・マイナビに嫌気がさして切り捨てて,企業のHPにある求人に直接申し込んで一発で通った人を知っていますから,そういう就活もあるのだということを,もっと多くの就活生に知ってもらいたいです.
就活生の格好を見ていてよく思います。
皆同じような黒色のスーツ、皆同じような色柄のネクタイ、皆同じような髪型。女性に至っては同じような色形の髪留めetc… みんなハンコを押したように同じなんですよね。
面接を受けに来る学生さんの個性が読み取れないのは、採る側として結構しんどい思いをします。現にうち(中小)の役員も、今の就活のあり方に疑問を抱き始めているのが現状です。
参考にするのは大いに結構ですが、悪の組織マ●ナビやリク●ビに流されず、自分にとって正しいと思える方法で、就職活動を進めて欲しいと思います。
反応が遅れてごめんね.
ほんと,わざわざ没個性状態に身を固めながら「個性を見てほしい」というのは矛盾していますし,それを推奨する輩は害悪だと思います.
採る側の意見は大変参考になります.ありがとう.
大変ではありますが,企業として「今回欲しい個性」を明確にできると,採る側にとっても採られる側にとっても,良い結果を生む気がしますね.